柏洋通信Vol.47

【あのユニクロの強さの一端に触れてきました。】(5/31)

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田中さんから鋭い質問が矢継ぎ早に繰り出されます。単なる「聞く」勉強会ではありません。我々も真剣に考える場なのです。

 気が付いたら一月以上もご無沙汰していました。
 決して社内に閉じこもっていたわけではないのですが、体力、気力の衰えが、好奇心や発信力まで鈍らせているのではと、反省至極です。
 ここらで気分を一新して再開です。

 さて、私がある異業種の勉強会に出席していることは、以前このコラムでも紹介した通りです。
 全く異なる業界のトップの皆さんと交流することで、多くの気づきや刺激を受けてきました。
 毎回講師の方々やメンバーとのやり取りの中で、「こんな考え方もあったのか」と驚くことばかり。
 凝り固まった頭の筋肉をほぐすには、うってつけの場です。
 勉強会終了後の懇親会も有意義な場です。
 仕事の悩みや相談事を持ちかけることもあり、そこから新たな仕事のヒントや繋がりを得ることも多々ありました。

 今回の講師は田中雅子さん。
 ファーストリテイリング(以下ユニクロ)で柳井さんの片腕として数々の新規事業を立ち上げ、  スピンアウト後はコンサルタントとして、著書や講演を通じてユニクロの経営エッセンスを紹介しています。
 マスコミにも度々登場していますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
 田中さんはイギリス留学後に大学院に進みますが、バブル崩壊によって苦境に立たされた実家の家業を継がざるを得なくなります。
 その後紆余曲折を経て外資系企業の部長職を経て、30台でユニクロに入社されます。

 ユニクロの強さの根底には、徹底したスピード経営があると言います。
 田中さんの実体験に基づく数々のエピソードに、正に圧倒的された2時間でした。
 まず驚いたのは、田中さん自身が受けた採用面接が、なんと朝の7時からだったということです。
 さらに面接会場で田中さんを待っていたのは、トップを含む役員が勢ぞろい。
 しかも面接時間はわずか10分程度です。
 そして面接後の開口一番が「いつから来られますか?」
 これには田中さんもびっくりです。何せまだ現在の職場を辞めてもいなかったのですから。
 ちなみに「柳井さんはいつもそんなに話が短いのですか」と質問すると、「そうです。会議での発言も、決裁をもらう際にも5分程度です」とのこと。
 これには深いわけがあったのです。
 ユニクロのような業態は、ファストファッションと呼ばれます。
 最新の流行を採り入れながら価格を押さえた商品を、短いサイクルで大量に生産し、売り切らなければなりません。
 何より重要なのがスピードだということが社内で意思統一されており、  それはファーストリテイリングという社名にも表れています。
 トップ自ら社内にスピード感を示すだけではなく、ユニクロでは経営のスピードをF1級に高める様々な仕掛けが縦横に張り巡らせています。
 中でも極めつけは「意思決定をしないで決めるシステム」です。
 一見すると矛盾しているように聞こえますが、現場で判断が迅速に下せるよう、徹底してマニュアル化を進めているのです。
 例えば出店条件。
 ロードサイド、ショッピングモール内、駅中では大きく異なりますが、それぞれに条件が事細かに決められており、一つでも条件に合わなければ出店できない仕組みです。
 出店先の形態ごとに在庫量や粗利の目標数字まで決められているので、現場の意思決定に迷いはなく、スピードは格段に上がります。
 こうしたことを可能にしているのは、商品の動きや売上、在庫などの膨大な数字を、徹底的に管理しているからなのです。
 そしてトップから店舗の販売員に至るまで、全員が数字に基づく明確な視点でコミュニケーションをとることが、ユニクロのDNAとして深く根付いているからだと感じました。
 私を含め「経営にはスピードが大事。もっとスピードを上げよう」と叫ぶ経営者は多いものですが、スピードアップの仕組み造りに、  ここまで徹底してこだわっている経営者は意外に少ないでしょう。
 まだまだわくわくするようなエピソードが披露されましたが、スペースの関係上この辺りにしましょう。
 ユニクロの強さの神髄をもっと詳しく知りたい方は、田中さんの著書にぜひ目を通していただきたいと思います。
 最後に田中さんの言葉が胸に刺さりました。
 「ユニクロもスタートは山口県の一洋品店。皆さんにもできないはずはない」と。

代表取締役社長
七島 徹